研究概要 |
素粒子の標準理論は不完全である。そのほころびが最初に現れるのはヒッグス粒子が関与する部分だろうし、世代の起源を明らかにするには標準理論を超えることが不可欠である。現在の電弱統一理論では、ヒッグス相互作用が電弱対称性を電磁対称性に自発的に破り、同時にクォーク・レプトンに質量を与える。電弱統一理論のゲージ場(W, Z ボゾン)の相互作用は実験的にほぼ確立されているが、ヒッグス粒子については現時点では直接的な証拠は一つもない。この状況は2010年から始まったLHCの実験で一変する。ヒッグス粒子の発見は確実であり、超対称性粒子が存在するかどうかも明らかになるだろう。また、レプトン、特にニュートリノ部分での世代間混合(フレーバー混合)がクォーク部分と違い、非常に大きいことが確認されているが、これはクォーク・レプトンの質量、混合のパターンの背後には隠れた対称性があることを意味するであろう。新粒子の発見、ヒッグス粒子の相互作用の確定を通して、現在の電弱統一理論の基本的枠組みが正しいか、対称性の破れの起源は何か、そして3世代あるクォーク・レプトンの起源は何かなどが明確になる。本研究課題では、これらの問題を余剰次元の立場から考察し、LHC/ILCなどの実験でいかに検証できるかを明らかにする。高次元ゲージ理論、ゲージ・ヒッグス統合、TeVブラックホール生成、高次元シーソー機構などを追求し、ヒッグス場の起源、物質世代の起源、および時空構造に迫る。
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