研究課題
本研究は、宇宙から飛来するガンマ線を、角度分解能に優れたエマルション(原子核乾板)を用いて精細に観測することを目的としている。検出器内で捕らえたガンマ線イベントの到来方向を天球上にマップするには、それぞれのイベントの発生時刻を正しく知った上で、刻々と変化する天球に対する観測器の方向を正確に知る必要がある。エマルション中の飛跡の通過時刻を知るために、飛跡の蓄積中に複数段のエマルションフィルムをアナログ時計の時針・分針・秒針のように異なる周期で動かし、フィルム間での飛跡の位置ズレ量を変化させ、解析時にその位置ズレ量を再構成することで秒単位の時間情報を得る多段シフターという手法を確立した。昨年度までに、テストフライト用の気球搭載モデル1号機およびその20倍の観測面積を持つ2号機を製作し、1号機を用いて、気球高度と同等の低温・真空環境下においても、往復する周期運動の軌道および送りの精度10μm以内が確保できるかの試験を実施した。さらに、観測器の天球に対する姿勢をモニターするシステムの開発を行った。将来の長時間フライトを見据えて、昼間でも気球高度で星を捉えられる条件をさぐり、短波長の背景散乱光を抑えて、星の光を捉えることに最適化した、光学フィルター、大口径レンズ、高量子効率の近赤外CCDカメラを組合せたシステムを作った。最終年度に1号機とスターカメラシステムを実際に気球に搭載して観測を行う予定であったが、JAXAでの気球実験への採択が1年遅れ2011年の5月に打ち上げ予定となっている。
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Nuclear Instr.and Methods in Phys.Research, A
巻: A620 ページ: 192-195