研究課題
超新星ニュートリノ反応の影響を強く受けると考えられるLi-7、Be-11、La-138、Ta-180の4核種の元素合成過程を、理論・原子核実験・天体観測の3分野を統一的に詳細に研究し、元素量比に関する理論予測と観測との比較から未知のニュートリノ振動パラメータ(質量差Δm13と混合角θ13)を決定することが、目的である。初年度は、以下のような具体的な研究の進展があった。1. ニュートリノ元素合成過程の理論計算に必要なニュートリノ・原子核(ν・He-4、v・C-12)反応断面積を、原子核のs殻およびp殻の新しい殻模型ハミルトニアンを構築して理論的に計算した。ハミルトニアンは中性子過剰でアイソスピンの大きな原子核でのテンソルカの役割を巧く記述している。全ての粒子放出チャンネルへの分岐比の計算には、Hausser-Feshbach formalismを用いた。構築したハミルトニアンは、原子核の電磁気モーメント、ガモフ・テラー型遷移強度の測定値、等に関するほとんど全ての弱電構造に関する実験量を良く再現するものである。2. 初期条件の異なる超新星爆発ニュートリノ放射モデルを作り、ヘリウム層と炭素層でのLi、Be、B同位体の生成量を理論計算した。ニュートリノと原子核の中性カレントおよび荷電カレントによるHe-4とC-12の破砕反応に始まる一連の元素合成過程で、同位体中特にLi-7とB-11が卓越して多量に作られることが判った。これらの元素生成比Li-7/B-11は、超新星ニュートリノモデルに強く依存しないことを見いだした。これは、元素生成比Li-7/B-11が未知のニュートリノ振動パラメータを決定する上で優れたプローブであることを意味する。3. Liの同位体比を「すばる望遠鏡高分散高分解能スペクトログラフ」を用いて高精度で検出するために、装着すべき光量増光装置イメージスライサを試案・設計した。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (4件)
Phys. Lett. B674
ページ: 276-280
Phys. Rev. D77
ページ: 043005
Phys. Rev. C77
ページ: 015809
Journal of Phys. G35
ページ: 0252203
ページ: 065802
Astrophys. J. 680
ページ: 846-857
ページ: 068801
Astrophys. J. 685
ページ: 1089-1102
Phys. Rev. D78
ページ: 045010
Astrophys. J. 686
ページ: 448-466
ページ: 123001