本研究は、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光分布の精密測定により、インフレーション(極初期宇宙の急激な膨張)の画期的な検証を行い、かつ現存する最大の加速器で到達可能なエネルギーの一兆倍という超高エネルギーでの物理学を開拓する事を目的としている。このためにQUIET実験を推進する。CMB偏光の精密測定は、二度のノーベル物理学賞(1978年、2006年)に輝くCMB温度とその揺らぎの測定を超え、宇宙の誕生と物理学の根本法則に関する人類の知識を飛躍的に高めると期待されている。 平成20年度の8月よりQバンド(40GHz)レシーバーシステムをチリ・アタカマに設置し、QUIET-I望遠鏡の立ち上げを開始した。9月頃よりデータを取りはじめ、様々な方法を用いてデータの校正を行った。 QUIET計画では現在推進しているQUIET-Iを増強して10倍以上の感度を有するQUIET-II実験に移行することを予定している。その準備の一環として、プロトタイプADCボードの開発、および、現在シカゴ大学で稼働しているものより3倍程度効率のよい偏光計試験システムの開発を開始した。ADCボードは設計を終え、試作品を完成させるところまで進めることができた。偏光計試験システムについては、放射体をクライオスタット内に封じ込める設計を行い、試作、試験を行った。
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