研究概要 |
<単一光子を発生する等電子トラップの原子配置の確定> エネルギーの良く揃った単一光子源になるリン化ガリウム(GaP)中の近接する2つのリン原子(P)を2つの窒素原子(N)が置換して作られるNNペア等電子トラップの原子配置を発光の偏光特性、エネルギー位置、δドープ層の厚みを変えて層間にまたがる原子配置をもつ偏光発光を調べることで決定した。GaP:Nの研究初期(1960年代)から信じられてきたNNペア等電子トラップの原子配置は間違っており、およそ50年ぶりに原子配置が確定した。NN_1ペアが原子配置(0,0,0)-(2,2,0)、NN_3ペアが原子配置(0,0,0)-(3,3,0)、NN_4ペアが原子配置(0,0,0)-(4,4,0)、NN_7ペアが原子配置(0,0,0)-(5,5,0)であることを確定した。また、近赤外領域に新たに原子配置(0,0,0)-(1,1,0)を持つNNペア等電子トラップを発見した。 <量子ドット中の電子スピン初期化とスピン才差運動の研究> 1電子ドープInP量子ドット中の電子スピンが偏極する過程を時間分解カー回転法により観測し、ドープされた電子のスピンが円偏光パルスにより書き込まれる機構を2つ明らかにした。すなわち、(1)スピン1重項電子対と正孔からなるトリオンの生成・正孔スピンの反転・電子正孔対の再結合からなる過程と(2)トリオン共鳴スピンフリップラマン散乱である。一方、中性InP量子ドットでは、励起子スピンの才差運動が観測され、才差運動周期の磁場依存性から電子・正孔交換相互作用が求められた。CdTeとCdMnTe量子井戸/量子ドットや電子ドープ/アンドープZnO薄膜を用いて、電子スピンの才差運動を時間分解カー/ファラデー回転法により測定し、Mnイオンの磁性により電子スピン才差運動が増大したり、電子ドープによりスピン才差運動が著しく長くなる振る舞いが観測された。
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