研究課題/領域番号 |
20244058
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鄭 国慶 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (50231444)
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研究分担者 |
稲田 佳彦 岡山大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (80273572)
川崎 慎司 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 講師 (80397645)
市岡 優典 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (90304295)
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キーワード | 超伝導 / 核磁気共鳴 / 空間反転対称性の破れ / スピン軌道相互作用 |
研究概要 |
本研究は、結晶の空間反転対称性の破れが生み出す新奇な超伝導の物理を物質合成と核磁気共鳴(NMR)を中心とする測定法により実験的に解明し、さらに新しい超伝導体の創製を目指すものである。下記に得られた成果を列挙する。 (1)空間反転対称性の破れた(NCS)超伝導体Li2(Ptl-xPdx)3Bの作製、評価及びNMR測定を行い、スピン軌道相互作用の変化と超伝導状態の変遷を明らかにした。Li2Pd3Bは等方的なギャップをもつスピン一重項超伝導体であるが、Li2Pt3Bは異方的なギャップをもつスピン三重項超伝導体である。両物質の際立った物性の違いが何に起因するかはわかっていなかった。本研究ではLi2(Pd_<1-x>Ptx)3B混晶試料を作製し、結晶パラメータなどを系統的に制御しながら超伝導対称性の移り変わりをNMR法により精密に調べた。その結果、超伝導対称性がx~0.8を境に急激に変わることを明らかにした。すなわち、x<0.8の領域ではスピン一重項で等方的なギャップをもつ状態が支配的で、x>0.8の領域ではスピン三重項で異方的なギャップをもつ状態が支配的であることを見出した。 その背後にある原因を究明するために、結晶構造の解析をx線リートベルト法により行った。その結果、Pt(Pd)B6八面体の歪みがx>0.8では急激に増大することを見出した。この歪みの増大がスピン軌道相互作用を増大させた原因であることを第一原理バンド計算上により確認し、それがスピン三重項混成の主原因であることを明らかにした。 (2)LaPtBiやBiPdなどのNCS超伝導体を作製し、超伝導ギャップの対称性などを明らかにし、局所的な結晶のひずみがスピン軌道相互作用を増大させるのに有効であることを明らかにした。 この研究で空間反転対称性の破れた超伝導の物理の全容をほぼ解明できた。
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