研究概要 |
光子は、量子情報の担体として、伝送特性に優れ、かつ外部からの擾乱に強いなど良質な特性を持つ。特に、2001年に、Knill,Laflamme,Milburnらによって、単一光子源と線形光学素子、および検出器を用いた量子計算スキームが示され、スケーラブルな量子コンピュータ実現の有力な候補ともなっている。しかし、現在広く用いられているパラメトリック下方変換を利用した光源では、ポンプ光と下方変換光子間の群速度不整合が、良質な量子干渉の障害となっていた。本研究では、この群速度不整合を解消した光源を「群速度エンジニアリング」技術により創成することを目指した。 平成21年度に考案した、エアギャップにより不整合を解消する、擬似位相整合素子を用いた1回反射型デバイスについて、平成22年度は栗村らの作成したPPSLT(Periodically Polled Stoichiometric Lithium Tantalate)を擬似位相整合素子として用いたパラメトリック下方変換光子対の生成の研究を行った。その結果、PPSLTからの同心円状の蛍光を確認、それを角度・波長依存性(チューニングカーブ)を計算によって求めたものと比較、対応を確認した。また、パラメトリック下方変換の逆過程である、第二高調波発生により、チューニングカーブの妥当性の検討を行った。 一方、バルクのBBO結晶を利用する方法について、2光子干渉性の向上について引き続き研究を行い、昨年の93%からさらに2%改良された95%を得ることに成功した。また、これらの光子源を利用した線形光学量子回路として、2001年にKnill,Laflamme,Milburnらが提案した、2つの単一光子非線素子を組み込んだ、制御ノット光量子回路の実現に世界で初めて成功した(論文投稿中)。また、クラスター状態の生成(JOSA-B)に関する研究、2光子干渉の量子リソグラフィーへの応用に関する研究などを実施した(JOSA-B)。
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