研究課題
発生が予測される巨大地震(大地震)の震源域において、歪蓄積および解放過程を明らかにすることは、地震の発生予測のみならず、地震現象そのものを理解する上で重要である。本研究は沈み込み帯において地震学的および測地学的観測を行い,様々な時定数のゆっくり地震の観測および地震に伴う流体の移動の観測を実施し、ゆっくり地震の発生過程を明らかにすることを目的とする。ゆっくり地震の観測を目的とした観測をH20年度より継続して行ってきた中、2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生した。H20年度以降繰り返し実施してきた宮城沖の海底測地・地震観測網は、本震の主すべり域の直上に位置した。H23年度は、H20年度以降実施してきた観測記録に基づくゆっくり地震の研究に加えて、本震時の地震時地殻変動に関する研究を重点的に行った。H23年度は、昨年度に引き続き日本海溝付近の海底に設置した海底圧力計、海底短周期地震計、および海底長周期地震計の回収および再設置作業を行った。その結果,以下のことが明らかになった。(1)海溝軸からおよそ20km離れた地点では、海底が地震時に5mの隆起したことが海底圧力記録から明らかになった。(2)海溝軸から50km陸側の地点が地震時に31m海溝側に移動していたことがGPS/海底音響結合方式による長基線の海底地殻変動観測により明らかになった。これらの結果は,海溝軸近傍で大きな地震時すべりが生じていたことを示す。また、(3)2008年に観測された海溝軸近傍のゆっくり滑り域が本震時の巨大すべり域内に含まれることが分かった。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の主目的である巨大地震発生域周辺のゆっくり地震の観測事例に加えて、2011年東北地方太平洋沖地震,すなわち巨大地震の地震時変動が観測できたため。本研究の観測記録は巨大地震前から発生に至る地殻変動を捉えていることから、次年度以降巨大地震発生直前の現象の理解の進展が期待されるため。
次年度は特に2008年に観測されたゆっくり地震について再解析を行う。また、観測された海底圧力連続記録から2011年の地震発生に至るプレート間のゆっくりすべりについて研究を進める。
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