研究概要 |
「かぐや」の重力データを高精度にするため、JAXA,国立天文台や海外局の電波望遠鏡を使った衛星観測により軌道決定を行い、月の高精度重力データを取得する。さらに「かぐや」搭載レーザ高度計により詳細地形データを取得する。この両者を合わせることで、これまでよりも精度が1桁以上高いブーゲ重力異常分布を求め、月地殻厚さマップを作成する。VLBI観測データは、国立天文台の既存の計算機システムを使い、ソフトウエア相関処理を行い、衛星の位置を決定する。 平成20年度は「かぐや」本運用の時期であり、月全球の重力データ(衛星追跡による)、地形データ(レーザ高度計による)を取得した。VLBI観測の効率を高めるために、VERA水沢局の受信部に、新たにビデオコンバーターを導入した。地球測地計測系と「かぐや」衛星観測系の切替がスムースになり配線替えによる観測時間のデッドタイムを少なくした。「かぐや」のデータ解析より、世界で初めて裏側を含む正確な月全球重力場と、極域を含む詳細な月全面地形図を求めた。この初期成果は2009年2月に、サイエンス誌に2本の学術論文として掲載されて高い評価を受けている。また、取得された重力データをもとに、裏側を含む衝突盆地について、新たに2種類のタイプが分類されることが明らかになり、表側と裏側の違いが明確になった。これにより、現在の地殻構造だけではなく、その進化過程を制約することができる。また、これまで正確な地形データが無いために求められていなかった月の極値の日照率をはじめて正確に求めることに成功した。
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