研究概要 |
「かぐや」の重力データを高精度にするため、JAXA,国立天文台や海外局の電波望遠鏡を使った衛星観測により軌道決定を行い、月の高精度重力データを取得する。そのために国立天文台の既存の計算機システムを使い、VLBIデータの相関処理を行い、衛星の位置を決定する。さらに「かぐや」搭載レーザ高度計により詳細地形データを取得する。この両者を合わせることで、これまでよりも精度が1桁以上高いブーゲ重力異常分布を求め、月地殻厚さマップを作成することを目標としている。 本年度は、「かぐや」が月面に衝突するまで本衛星の観測を行い、その後、6月末まで子衛星「おうな」の観測を行った。その後は、VLBI観測データの相関処理に注力して、本研究費で雇用した研究支援員とともに、基本観測(同一ビーム、スィッチング)期間の相関処理は終えて、重力場モデルに取り込んだ。VLBIデータを入れない場合と比較すると、軌道決定精度が大きく向上して、慣性モーメントなどの算出に効いてくる、低次の重力場係数の精度の向上を確認することができた。 重力データと地形データから、世界ではじめて精度の高い月全球の地殻厚さ分布を求めて、Geophysical Research Letter誌に論文として公表した。月面で最も地殻厚さが薄い場所は、モスクワの海であることが明らかになった。月の裏側の衝突盆地の環状地形は、地殻で主に支えられることを明らかにした。南極エイトケン盆地の構造が楕円形であることを確認した。
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