研究概要 |
本年度、交付申請書に記した研究実施計画は、(A)既存の地震探査データを再解析し海洋反射構造を求めること、(B)別途予算で実施する伊豆島孤海底地震探査の機会にXCP,XCTDを投下して水平流速と温度・塩分濃度の鉛直分布を求めること、(C)別途予算で実施する日向灘での新型震源を用いた地震探査のデータから海洋反射構造を出すこと、であった。このうち(A)に関しては房総沖の反射構造断面を出し特に黒潮流の北側境界をシャープな反射面として1400mの深度まで追跡できることを明らかにした。(C)にかんしては別途予算による地震探査が諸般の事情で屈折法に限られてしまったので海洋反射構造は出せなかった。最重要課題である(B)については年度当初にXCPとXCTDをそれぞれ20台購入した。そして、2008年11月7日から9日にかけて悪天候のわずかな合間をついて行われた反射探査(伊豆島孤沿いの測線KT04:全長233km)に併せて、測線の中間付近の100km区間で5km間隔でXCP,XCTDを投下し海洋物理測定を実施した。XCPについては投入前の準備を特別に工夫することで成功率95%というこの計器としては驚異的な実績を上げた。これまでに、(1)XCTDで計測した温度・塩分から計算した海水のポテンシャル密度分布、(2)XCPで計測した水平速度のズレから計算した乱流運動エネルギーの消散率分布を求め、更にそれから乱流拡散係数分布を各測定点で求めた。また(3)反射探査データから海洋反射構造を求め上記(1)(2)のプロファイルと比較した。定性的には乱流拡散係数の大きい個所では海洋反射面が深くまで見られるという顕著な相関関係が見られ、今後両者の間の定量的な物理関係を見出すことが課題となる。
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