1.観測実績:(1)KR10-09航海(2010年7月)Yamashita et al.(2011)で解析した北海道沖のA2mcs測線の延長部および三陸沖においてMCS調査を行った。その探査にあわせXBT/XCTD観測を実施した。(2)KR10-13航海(2010年12月)八丈島東方~鳥島にかけて実施した500kmにわたるOBS/MCS探査の測線上で数10km間隔でXCTD観測を実施した。また時間変化を見るため複数の観測点で繰り返しXCTD観測を行った。(3)KR11-01航海(2011年1月)内部波準共鳴振動が最も卓越すると思われる小笠原東方の北緯28.5度付近を通る南北測線においてMCS探査を実施し、その調査前後でXCTD観測を行った。(4)KR11-05航海(2011年3月)KR11-01航海に引き続き小笠原東方の南北測線におけるOBS/MCS探査にあわせてXCP/XCTD観測を実施した。KR11-01とKR11-05航海では同一測線で3つの断面を取得することができ、海洋中の構造変化を捉えることができた。この航海では初めてMCS探査中に1ヶ所でXCTD観測に成功し、XCTDとMCS断面の対比が可能となった。 2.数値モデリング実績:「超深海における海底地形の凹凸から鉛直上方へ伝播する内部潮汐波」と「深海の背景場に存在する内部波」との非線形相互作用に関する高精度の数値実験を行った。その結果、この非線形相互作用を通じて海底地形の凹凸上で励起される鉛直乱流拡散の強度は従来推察されてきたものよりも鉛直方向に急激に減衰することを明らかにした。 3.固液複合系解析実績:地震探査の結果に基づく巨大地震の断層上盤側の3次元構造モデルを構築し、熊野灘沖に発生した超低周波地震活動の震源解析を行った。その結果、これらの地震がデコルマ沿いの超低角逆断層運動であると同時に、デコルマを流路とする地下深部の水による水圧破砕現象であること、そのため異常にゆっくりとした断層伝播であるにも関わらず高周波が異常に励起されていることを明らかにした。
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