研究概要 |
研究3年度に当たる平成22年度は、大きく分けて3つの研究を実施した。1つめは、2007年に南極昭和基地で得られた高分解能FTIRによる微量大気成分変動の詳細解析。2つ目は、最終シーズン(3シーズン目)となる北極圏・ノルウェー・スピッツベルゲン島・ニーオルスンにおける低分解能FTIR及びエアロゾルゾンデによるPSC観測の実施。3つめは、ロシア・サレハルドにおけるオゾンゾンデマッチ観測の継続である。以下に、それぞれについてその研究実績について述べる。 まず昭和基地高分解能FTIR観測に関しては、2007年4月~10月に観測されたFTIRによる微量大気成分の解析データのうち、HNO3とHClデータに注目した。リファレンスカーブによって想定されるHNO3,HCIからの差として求められるdHNO3, dHClとその場の気温を比較してみることにより、TNAT, TICE以下に気温が下がったのと同期してdHNO3, dHClの値が下がり、その後HClは回復するがHNO3は低濃度を維持する「脱窒」現象を明らかにすることが出来た。 次に、ノルウェー・ニーオルスンにおけるPSC観測に関しては、2010年12月から2011年3月にかけて、のべ7名によるPSC観測を実施した。今シーズンは成層圏の気温が低く、12月~2月にかけて多くのPSCを観測することに成功した。また、エアロゾルゾンデによる観測を1月5日、2月8日、2月9日の3回実施した。 また、ロシア・サレハルドにおいて、昨年度立ち上げたオゾンゾンデ観測をこの冬も行い、2010年2月~4月の期間に、計4回のオゾンゾンデ観測を実施した。これらの観測結果から、史上最大規模となった2011年北極域オゾン破壊の様子を明らかにすることが出来、その速報は新聞各紙にも掲載された。
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