研究課題/領域番号 |
20244079
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研究機関 | 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター |
研究代表者 |
熊谷 道夫 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, 環境情報統括員 (40234512)
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研究分担者 |
北澤 大輔 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (30345128)
朴 虎東 信州大学, 理学部, 准教授 (20262686)
山崎 秀勝 東京海洋大学, 海洋科学部, 教授 (80260537)
長谷川 浩 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90253335)
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キーワード | 湖底泥 / 水温 / 溶存酸素濃度 / 消散係数 / 湖底境界層 / 数値モデル / 内部波 / 琵琶湖 |
研究概要 |
本研究では、酸素消費速度がもっとも高く複雑な反応系が存在している琵琶湖湖底付近の低酸素水塊の微細構造に着目し、(1)その形成過程と維持機構を明らかにし支配的な物理過程と関連した生物地球化学機構に関わるパラメータを特定すること、(2)湖底境界層の変動を長期にわたって予測する数値シミュレーションモデルを開発すること、(3)地域の温暖化を加速する領域気候変動と湖内の混合過程との関連を検証することを目的として実施しており、平成21年度は、以下の研究成果を得た。 ●低酸素水塊微細構造計測プラットフォームを用いて、水深90mの深度での堆積物中の溶存酸素濃度測定に成功した。これによると、冬季でも酸化還元層の厚さは3mm程度にしか過ぎず、いったん嫌気化した湖底泥中の酸素濃度はなかなか回復しないことがわかった。 ●詳細モード超音波流向流速計(ADC-TP-1200F)を湖底に設置し湖底境界層中の平均流と乱流を計測した。これによって、レイノルズ応力を計算した結果、湖底泥巻上げに十分な応力が存在することがわかった。ただ、水中の懸濁物との関係を調べた結果、流れが強いときの方がきれいになることが判明した。したがって、湖底境界層中の高濁度層の形成は、流れによる巻上げではない他の要因が考えられることが推定された。 ●有機物の沈降速度と渦動粘性係数、渦動拡散係数のパラメタリゼーションを行うことにより、湖底付近で形成される低酸素水塊を再現した。また、富栄養化や気候変動による低酸素水塊の変化を予測した。さらに、低酸素水塊の挙動を解析した結果、成層の深化とともに、内部波による低酸素水塊の移動範囲が広がることが示された。 ●琵琶湖北湖において堆積物直上水中のヒ素の溶存化学種を観測した結果、主要な化学種は5価無機ヒ素で、濃度範囲は8-30nMに分布した。3価無機ヒ素の濃度は1-5nMで、メチルヒ素は検出限界(0.1nM)以下であった。鉛直分布において、特に、無機ヒ素濃度が堆積物直上で増加した。季節変化では、冬季循環期に無機ヒ素濃度は約8nMまで減少するが、夏季停滞期には25-30nMまで増加した。一方、還元環境下で生じるような3価無機ヒ素の大規模な濃度増加はみられなかった。
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