研究課題
特筆すべき成果としては、オマーン・オフィオライトにおけるモホの多様性および関与する岩石の性質を明らかにしたことである。同オフィオライトで「モホの化石」に相当するものは、ガブロとかんらん岩の境界であるが、この境界(遷移)はかなり多様性がある(例えばシャープさにおいて)。ところが、かんらん岩類の単斜輝石はその微量元素特性において、驚くべき均質性を有している。LREEに乏しく、MORB的なメルトとの平衡を示している。これらの岩石はしばしば、初生的な見かけを呈する角閃石を有し、メルトが含水であることを示唆する。含水でMORB的なメルト、すなわち背弧海盆玄武岩的なメルトが関与して単一なセッティングでモホが形成された可能性を示していると思われる。今後さらに詳細な検討をしてこの仮説を検証したい。また、モホ直下の最上部マントルの化学的プロファイルを求めた。岩相的にはハルツバーガイトから上方にダナイトを経てウェールライトに変化する。上方に向かってかんらん石のFo値、NiO量は減少し、スピネルのCr#、Ti量は上昇する。これらの規則的変化は、ハルツバーガイト/メルト反応を示唆している。すなわち、ガブロ(メルトを代表)-ウェールライト-ダナイト-ルツバーガイトは巨大な反応生成物である可能性が高いと思われる。すなわち、モホ面が反応界面であり、モホの形成は、拡大中心下の最上部マントルで開始されのではなかろうか。シブヤン(フィリピン)、ナイン(イラン)、パンアフリカン(エジプト)などのオフィオライトのモホやモホ遷移帯の岩石の検討も始めており来年度以降化学組成の情報を付け加え、モホ形成過程に関してさらに一般化を図りたい。
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