研究概要 |
捕獲岩から得られる島弧のマントル~下部地殻の岩石学的な性質を解明し,モホ形成過程を考察した。今年度は,深部起源の捕獲岩に富むロシア,カムチャツカ弧が主たる対象であった。アバチャ火山,シベルチ火山などのカムチャツカ島弧の火山を調査し,島弧マグマがもたらした深部岩石を採集し,解析を加えた。カムチャツカ島弧ではアリバライト質ガブロ(かんらん石を含むガブロ)の同源捕獲岩が多産し,島弧下部地殻でかんらん石ガブロが盛んに生成されていることを示す。従って,カムチャツカ弧のモホは含かんらん石ガブロ/かんらん岩よりなることが推定される。最上部マントルは情報が乏しいが,アバチャイト(島弧性アンカラマイト)の存在から,ウェールライト質であることが予想される。また,アバチャイトの成因から,結晶分化作用がモホ形成に重要な役割を示したと考えられる。かんらん岩/メルト相互作用の関与は海洋底ほど大きくないであろう。一方,シベルチ火山の捕獲岩はかんらん岩質~パイロクシナイト~ホルンブレンダイトと変化に富み,また,個々の捕獲岩は極めて不均質であった。これらは島弧マグマとマントルかんらん岩の強い反応を示唆する。このプロセスはマントルと地殻物質の中間的物性を有する岩石を大量に地下に形成すると考えられ,不明瞭なモホを形成するはずである。また,シベルチ火山の捕獲岩はアバチャのものと同様に強い交代作用を受けていることが明らかとなった。また,大陸リフト帯における捕獲岩も比較検討し,捕獲岩から読み取る下部地殻~上部マントル過程の一般化を試みた。マグマ過程による始原的モホの形成(主として結晶分化による)→その後の交代作用/マグマ過程による改変(不明瞭化)が結論される。
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