研究概要 |
高圧及び超高圧変成岩類は海洋プレートの沈み込み帯深部で形成され,海嶺の沈み込みに関連して上昇する.本研究では変成岩類の沈み込み及び上昇冷却過程を明らかにするための基礎的な研究を実施し,高圧及び超高圧変成岩類の高精度高確度アルゴン年代学を確立することを主目的とする.また,変成岩の累進変成作用時期から後退変成作用までの時間的推移を定量的に求め,変成帯のテクトニクスを明らかにする. 本年度は西南日本の周防変成帯と三波川変成帯から高圧変成岩,アメリカ西海岸フランシスカン帯からエクロジャイト,西アルプスチニャーニャ湖地域から超高圧変成岩を採集した.採集試料については研磨薄片を作成し,顕微鏡観察による岩石記載を実施した.特に,ザクロ石に包有されているフェンジャイトに注目して薄片を観察した.フェンジャイトを包有するザクロ石と顕著な累帯構造を示す角閃石についてはEMPによる組成像(カラーマップ)を取った. 本研究で最も主要な設備品としてUVレーザーアブレーションシステムを購入した.ビーム径5ミクロンのUVレーザーを分析試料に照射する場合困難な問題が生じる.既存のCCDカメラでの観察では5ミクロンの分解能で位置を正確に決めることが難しいからである.そこで,顕微鏡写真による組成累帯構造イメージやEMPによるカラーマップイメージをコンピューター画面で見ながら5ミクロンサイズのビームを目的とする分析位置に照射する装置開発に着手した.この装置全体の開発のために,エンコーダーシステムを購入した. 直径5ミクロン深さ20ミクロンのサンプルサイズでは試料の重量で1.2ナノグラム,通常のアルゴンガス量に換算して0.01〜1×10^<-15>cc程度になる.このように少ない量では質量分析計のバックグラウンドが大きく影響する.そこで低ブランク希ガス抽出系の特注真空部品を購入した.
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