研究概要 |
高圧及び超高圧変成岩類は海洋プレートの沈み込み帯深部で形成され,海嶺の沈み込みに関連して上昇する.本研究では変成岩類の沈み込み及び上昇冷却過程を明らかにするための基礎的な研究を実施し,高圧及び超高圧変成岩類の高精度高確度アルゴン年代学を確立することを主目的とする,また,変成岩の累進変成作用時期から後退変成作用までの時間的推移を定量的に求め,変成帯のテクトニクスを明らかにする. 本年度は韓国忠清南道洪城エクロジャイト及びニューカレドニア北西部高圧変成帯Pam半島からエクロジャイト相の岩石試料を採集した,また,変成度と白雲母年代の関係を検討するためPam半島より東部のPuebo, Hienghen, Touho地域から泥質変成岩を系統的に採集した. 本研究で最も主要な設備品(UVレーザーアブレーションシステム,エンコーダーシステム,低ブランク希ガス抽出系特殊真空部品等)を以前に貰い受けていたVG5400希ガス質量分析計に導入し立ち上げを行った.しかし,イオン源を含む分析官に深刻なリークが見つかり,イオン源取り付け部分の大改造を実施した.顕微鏡写真による組成累帯構造イメージやEMPによるカラーマップイメージをコンピューター画面で見ながら5ミクロンサイズのビームを目的とする分析位置に照射する装置開発を継続して実施した. 既存の装置を使った研究から太平洋型造山帯の高圧変成帯上昇過程を検討した論文を2編投稿した.西南日本の三波川変成帯と四万十変成帯の地質構造-温度構造-白雲母年代の関係から前者は3100万年以上の長期間の塑性変形を伴って上昇し,後者は1300万年以下の短期間の変形を伴って上昇したことを明らかにした.この違いは沈み込む海洋プレート境界の性質の違いに起因するとした。世界の太平洋型造山帯の詳細なテクトニクスの理解に貢献した.
|