研究課題/領域番号 |
20245002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福村 裕史 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50208980)
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研究分担者 |
ZHANPEISOV Nurbosyn 東北大学, 国際教育院, 准教授 (10326275)
梶本 真司 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (80463769)
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キーワード | 時間分解X線回折 / レーザー誘起X線発生 / 硫酸銅結晶 / d-d遷移 / アゾベンゼン / 動径分布関数 / 光励起状態 |
研究概要 |
本年度は、これまでに導入した装置類の特性を引き出すため、測定条件等の最適化に取り組んだ。高繰り返しフェムト秒レーザーは、3kHzまで動作可能であったが、2.5kHzの方が長時間安定に動作し1.2mJ程度のパルス出力が得られることを確認した。またX線測定用CCDカメラを光子計数モードで動作させるソフトウエアを開発し、これによって格段に雑音の少ない高品質の回折像が得られるようになった。このようにシステムの性能を改善して、硫酸銅結晶のd-d遷移励起に伴う(220)面の時間分解X線回折像の変化を詳細に調べ、これを結晶表面における赤外正反射光の強度変化と比較した。赤外正反射光強度の変化は、d-d遷移の光励起とそれに続く失活による吸収帯の強度変化に起因するものである。この結果、d-d励起状態の緩和は数ピコ秒と極めて早いにも関わらず、結晶格子の膨張は数段階で起こり遅延時間があることが明らかとなった。このような時間遅れは、結晶内の電子励起状態のエネルギー散逸が必ずしも結晶間隔を伸長するモードにのみ直接移行するのではない事を示唆している。今後、硫酸銅結晶を重水素化し、高波数のOH伸縮モードがエネルギー散逸に関与している可能性について検討する。結晶を用いた実験に加えて、溶液を用いたX線回折測定にも取り組んだ。2個のヨウ素原子をパラ位に含むジヨードアゾベンゼンを用い、メチルナフタレンを溶媒として定常X線により回折実験を行ったところ、トランス体ならびにシス体の双方で、ヨウ素原子間に相当する動径分布関数の部分に、溶媒に由来しないピークが観測された。今後、フェムト秒光パルスとレーザー誘起X線パルスを用いてポンプ-プローブ実験を行えば、原子間距離を直接モニターすることで溶媒内における光異性化のダイナミクスが明らかになると期待される。
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