研究課題
本研究課題では、大気圧に近い圧力から超高真空までの幅広い圧力下において、秒からピコ秒にわたる時間領域における時間分解内殻分光測定ができるシステムを開発し、表面で起こる動的過程のメカニズムの解明に応用することを目的としている。初年度にあたる今年度は、雰囲気制御時間分解内殻分光装置のうち、高圧ガスセル、差動排気型電子搬送系付き電子エネルギー分析器、パルスレーザー導入系を備えた真空装置の製作と立ち上げを行った。試料周りのガス圧を上げて光電子スペクトルを測定するには、差動排気能を備えた高圧ガスセルが必要である。このような高圧ガスセルを内蔵した差動排気型真空チェンバーを設計し、これに差動排気型電子搬送系を持つ静電半球型エネルギーアナライザー(Omicron社製EA-125HP)を組み込んで最適化した測定システムを製作した。高圧ガスセルには放射光X線を導入するためのSi_3N_4製X線窓付き導入パイプとパルスレーザー導入用ビューポートを設けて、X線・レーザー同時照射実験を可能にした。さらに2年目に行う雰囲気制御内殻分光実験の予備実験として、既存設備である雰囲気制御NEXAFS実験装置と雰囲気制御XPS実験装置を用いて、銅酸化物のギ酸ガスによるエッチング過程と貴金属表面と高圧NOとの相互作用を調べる実験を行った。前者では、エッチング過程のリアルタイム追跡に基づくキネティクス解析を行い、そのメカニズムを明らかにすることができた。また、後者では、高圧ガス存在下で初めて可能になる可逆的な金属-NOコンプレックスの生成や、不可逆的な窒化酸化反応を観測し、低圧下では起こらない反応性吸着を確認した。また、銀の上のエポキシ化反応や金の上のチオフェン開裂反応など高圧ガスを導入することで起こる反応をXPS・NEXAFSを用いて詳細に解析し、このようなアプローチが反応機構解明に有効であることを確認した。
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