単純反応剤として、一酸化炭素および水素の混合ガスである合成ガスを用いるヒドロホルミル化、ヒドロアミノメチル化に続き、新たに発見した環化カルボニル化、エポキシドのアルコキシカルボニル化、尿素合成などを行った。21年度からの繰り越し分については特に新規にみつかった環化カルボニル化について集中的に行った。6-エンド型で閉環し還元された化合物が生じるヒドロアミノメチル化やパラジウム錯体触媒などで知られている6-エンド型でカルボニル化して6員環が生成する反応と異なり5-エキソ型でカルボニルが挿入されインドリノン誘導体が生成した。この反応は収率も一般性も高く進行した。またアリルアミンから無置換ピロリドンの合成も行うことができた。収率は中程度であり、改良の余地は残った。触媒のキャラクタリゼーションは、各種の表面化学的、無機化学的手法(XAFS:X線吸収微細構造、XRD:粉末X線回折、TEM:透過型電子顕微鏡)を用いて行った。その結果、酸化コバルトは還元され、大部分は0価になりまた、部分的に2価になっているものもあることが判明した。同時に行った酸化ニッケル担持金ナノ粒子触媒では、同じように酸化ニッケルは0価に還元されたが、さらに金と合金を作っていることが判明した。酸化コバルト担持金ナノ粒子では、合金を作ることはなく、この差異に興味が持たれる。さて繰り越し分でない反応も含め、コバルトカルボニル錯体が行う反応は全て活性があり、さらに他の金属にも応用できることが判明し、「固体触媒による金属カルボニル錯体触媒の代替」という概念に発展させることができた。
|