単純反応剤として、一酸化炭素および水素の混合ガスである合成ガスを用いるヒドロホルミル化、ヒドロアミノメチル化に続き、新たに発見した環化カルボニル化、エポキシドのアルコキシカルボニル化、尿素合成などを行った。触媒としては、主にコバルト酸化物担持金ナノ粒子触媒を用いた。各種の表面化学的、無機化学的手法(XAFS:X線吸収微細構造、XRD:粉末X線回折、TEM:透過型電子顕微鏡)を用いて解析した結果、コバルトは3価や2価から0価に還元されていることがわかった。また、当初は、金/コバルト酸化物触媒では、ヒドロホルミル化反応が進行することを本研究の課題と考えていたが、コバルトカルボニル錯体が行う反応は全て活性があり、さらに他の金属にも応用できることが判明し、「固体触媒による金属カルボニル錯体触媒の代替」という概念に発展させることができた。さらに本法で発生させることができる0価コバルト活性種は、フィッシャートロプシュ反応でも有効であることが分かった。従来のフィッシャートロプシュ反応では、炭化水素の分布はASF分布になることがしられており、有用でないガソリン成分が多く生成する。一方、我々の触媒系において少量の水が存在すると、反ASF分布となり、WAX成分が多く生成することがわかった。また、アルケンに対する酸素求核剤の付加反応は、有機合成やバルクケミカル合成において重要な反応である。応募者らはアルケンの水和、ヒドロアルコキシ化などを様々な触媒系で検討しているが、単純アルケンへのヒドロアルコキシ化反応のほか、ブタジエンモノオキシドへの末端からの酸素求核剤の付加反応なども達成した。
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