研究概要 |
細胞やナノ粒子などの微少量試料内の微量元素の超高感度分析を目的として,マイクロプラズマ分析装置の開発を行った。独自方式のパルス電源を開発することにより,平均電力を抑えつつ瞬間的に大電力を印加する,高出力パルスマイクロプラズマを開発した。最大55kWの入力電力を達成し,直流動作と比べてヘリウム原子線の発光強度を約10,000倍向上させることに成功した。プラズマを時間分解分光測定することで,プラズマの生成消滅過程および試料元素の励起機構を調査した。微少量試料の分析のため,微小な液滴をプラズマ中に射出できるドロプレットネブライザの改良を行った。従来は電磁バルブを用いていたが,これをピエゾ素子に変更することで,ドロプレットの体積を700ピコリットルから最少で14ピコリットルに低減することに成功した。 マイクロプラズマに対するドロプレットの溶媒負荷を低減するため,加熱型脱溶媒装置の開発を行った。ガス温度を約200℃以上にする事で完全な脱溶媒を実現した。ナトリウムでは,約190℃に加熱した際に発光強度を約17倍に増加させる事に成功した。 このドロプレットネブライザをマイクロプラズマに適用し,ドロプレット1滴による発光分析を行ったところ,ナトリウムでは従来の誘導結合プラズマ発光分析法と比べて100万分の1以下となる3.2agの検出下限絶対量を実現する事に成功した。また,誘導結合プラズマにドロプレットネブライザを適用し,酵母細胞を用いて単一細胞分析を実現した。
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