遺伝子の一塩基変異によって正常細胞のがん化や病原菌の薬剤耐性化が生じる。本研究は、一塩基変異部位を含む小領域に相補的なリガンドDNAと、無電荷の水溶性高分子からなるブロックコポリマー(DNAコンジュゲート)をキャピラリー電気泳動のアフィニティープローブに用いることにより、正常型および一塩基変異型DNAの分離・定量法を開発することを目的とする。今年度は以下の2項目について検討を行った。 1.ポリエチレングリコールとDNAからなるブロックコポリマーの合成と評価 ポリエチレングリコール(分子量2万)を一成分としたブロック型のDNAコンジュゲートを合成した。イネいもち病菌の薬剤耐性菌の遺伝子がこのDNAコンジュゲートをアフィニティーリガンドとして用いることによって分離・定量できることを実証した。さらに、測定温度、緩衝液の塩濃度、リガンドDNAの塩基数およびDNAコンジュゲート濃度と分離度の相関関係を明らかにした。 2.ポリアクリルアミドとDNAからなるブロックコポリマーの合成と評価 代表的な精密重合法の1つであるRAFT重合法を用いて高分子の分子量を厳密に制御したDNAコンジュゲートを合成した。無荷電で水溶性の高分子の代表としてポリアクリルアミドに着目し、その末端にリガンドDNAとの複合化を可能とする官能基(チオール基)を導入した。一方、リガンドDNAの鎖末端をマレイミド基で化学修飾し、両官能基のマイケル付加によるカップリング反応で構造明確なブロックコポリマーを得た。ポリアクリルアミドブロックの分子量を3千から1万6千まで変化させ、試料DNAの泳動抑制効果がどのように変化するか理論式を用いて定量的に解析した。
|