遺伝子の一塩基変異によって正常細胞のがん化や病原菌の薬剤耐性化が生じる。本研究は、一塩基変異部位を含む小領域に相補的なオリゴDNAと、無電荷の水溶性高分子からなるブロックコポリマー(DNAコンジュゲート)をキャピラリー電気泳動のアフィニティープローブに用いることにより、正常型および一塩基変異型DNAの分離・定量法を開発することを目的とする。今年度は主に以下の2項目について検討を行った。 1.アフィニティーキャピラリーゾーン電気泳動法の開発(昨年度から継続) ポリエチレングリコール(PEG)とDNAからなるブロックコポリマーをプローブに用いたキャピラリーゾーン電気泳動法を開発している。今年度は、プローブの分子量、分子量分布、および形状(ブロック型またはグラフト型)が分離度に及ぼす影響を調べた。その結果、分子量が大きく、分子量分布が狭いプローブほど高い分離度を示すことが明らかになった。形状に関してはブロック型、グラフト型ともにほぼ同じ性能を示し、合成法の簡便さからブロック型の方が実用的であることが示された。 2.ペプチド核酸とPEGからなるブロックコポリマーの設計と合成(昨年度から継続) 昨年度までに合成したペプチド核酸(PNA)とPEGのブロックコポリマーでは、水溶性を向上するために4残基のLys(正に帯電)をPNA部位に付加していた。その泳動挙動を調べた結果、キャピラリー管の内壁コーティングが損傷してシラノール基が露出した微小領域にプローブが静電相互作用により強固に非特異吸着することが示唆された。そこで今年度は、反対電荷を有するGluを同じく4残基含有するプローブを新たに合成した。キャピラリーゾーン電気泳動モードを用いて性能評価を行なったところ、新プローブは内壁に物理吸着をせず、分離結果の再現性がきわめて高いことが明らかになった。
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