我々は2つの固体表面間のナノ空間に閉じ込められた液体の構造(分子組織化)・ナノレオロジー・ナノトライボロジー特性を分子レベルで研究するための新しい評価法を我々は開発してきた。本研究では、開発した装置に電場印加、および広範囲の温度制御機構を組み込み、計測法の高度化を図るとともに、実用材料表面、液体試料の評価へと展開し、金属表面を用いた潤滑油・トラクションオイルのナノトライボロジー特性評価を行い、微細空間の束縛液体の分子科学ならびに現実系の分子の配向・構造制御・ナノレオロジー・トライボロジー制御の基礎を形づくることを目標としている。 平成20年度は様々な実用材料表面を用いた表面力・ナノ共振ずり測定を行うための様々な表面の調製法を検討した。具体的には、雲母壁開面に真空蒸着あるいはスパッタリングにより種々の金属薄膜(ニッケル、ニッケルクロム合金、金、銀、鉄)を調製し、金属面を測定用の石英ディスクに貼り付けた後、雲母シートを剥離することにより、測定に用いるのに十分な平滑性・均一性を有する金属表面が得られることを確認した。さらに、金表面を電極として用い、電場を印加する機構を共振ずり測定装置に組み込みを行い、電場印加により配向を制御した液晶の配向・構造化挙動の評価を行った。雲母表面間の液晶(6CB)は電場の印加により長軸を電場に対して平行(雲母基板表面に垂直)に配向したが、表面間距離が約10nm以下まで減少すると空間的閉じ込め効果が支配的になり液晶は表面に平行に配向することが明らかとなった。
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