研究概要 |
本申請では、種々の非平衡中間相を経由する結晶化機構を系統的に明らかにし、高分子結晶化における新たなパラダイムを示す。同時にこのような結晶化ルートを用いて、結晶化以前の非晶構造を「非平衡中間相」により制御し、新たな高分子結晶高次構造制御方法を開拓している。 本年度の大きな進展は、水素結合による相互作用の強いポリアミドで、非常に強いメモリー効果について調べ、その効果の定量的把握を行なったことである。その結果、ポリアミド-6では、平衡融点以上の高温において長時間(数時間)アニールしてもそのメモリー効果が消去されることはなく、アニールの途中過程において様々な非晶中間状態が存在することが示唆された。さらに、成形加工過程で重要となるせん断流動のメモリー効果についても定量的に調べた結果、μmからnm二おける距離スケールにおいては配向が残ることはなかったが、結晶化速度に対するメモリー効果は大きく残り、非常に局所的なスケールでの強固な配向効果が残りそれに対応する新たな非晶中間状態が存在することが強く示唆された。これらの中間体から結晶化を行なうことにより、新たな高次構造形成の可能性があり、今後進めるべき研究方向が示された,さらに、アイソタクチックポリプロピレン(iPP)のメゾ相からの結晶化過程について詳細に調べた。メゾ相から昇温を行ない結晶化させると条件によっては非常に大きな結晶が生成する。この点に注目し、昇温速度および融点直下での保持温度に2つの条件について、巨大結晶生成の条件を明らかにした。これにより、大きな結晶により高弾性率を有するiPPの作成の方向が示され、今後の物質開発の方向が明らかになった。
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