前年度までにおいて、LB膜及び真空蒸着膜によるジアセチレンモノマーの成膜と紫外線照射によるポリジアセチレン薄膜の形成について検討を行ってきた。LB法では、成膜条件の最適化によって比較的良好な薄膜が形成できるものの、成膜時に水を用いることやCd等の有害金属の使用が必要であることが大きな問題点であり、最大移動度も10^<-5>cm^2/Vs程度の低い値に留まった。そこで、本研究では、真空蒸着プロセスによる成膜に焦点を絞った。蒸着成膜では、特に、テフロンでラビングしたSiO_2基板上にポリジアセチレンモノマーを蒸着し、基板温度を50℃に設定した場合、数μmx10μmのドメインサイズに達するフローリング状の結晶ドメインが得られ、最大ホール移動度0.1cm^2/Vs程度の値が得られている。しかしながら、SEM、AFM観察から多数の線状のクラックが膜内部に観測され、より高速の移動度を実現するためには、新たな重合手法が必要とされていた。本研究では、紫外線、熱、電子線等の様々な重合条件について検討を行い、モノマー薄膜のSEM観察時にジアセチレンモノマーが均一に重合する様子から、電子線照射による重合法の有用性を見出した。電子線照射では、均一にモノマーの重合が起き、FET特性も優れた性能を示し、最大ホール移動度4cm^2/Vs程度の高い値が得られた。光重合法では重合度が不均一であるのに対して、電子線照射では、均一に重合反応が進行することがわかった。最終年度は、電子線照射プロセスの最適化について検討する。また、本年度は、レーザー走査(アニール)による光重合、結晶化の促進についても検討を行い、高分子薄膜の配向性制御、レーザー走査方向への結晶ドメイン形成に成功した。これらの研究成果も統合する。
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