研究課題
ジアセチレン基を有する有機化合物(DA)は、熱あるいは光により固相重合でき、古くから主鎖伝導を用いた高移動度有機半導体材料として期待されている。その一方で、DAを用いた有機FETでは、これまで移動度が、最速でμ_h~10^<-3>cm^2/Vs程度に留まっていた。これは、有機FETを作製する過程において、重合時におけるわずかな体積変化による基板からの有機薄膜の剥離が原因で、材料が有する本質的な高い電気特性を引き出せてないことを突きとめた。そこで、本研究では簡便に高移動度を実現する方法として有機絶縁膜をバッファー層に用いてPDAのわずかな体積変化による剥離を抑え、さらに裏面からの光重合により活性層中におけるキャリア伝導層の均一な重合に取り組んだ。石英基板上にゲート電極としてA1層を、絶縁膜としてパリレン-Cを積層させた。石英側から重合させるためA1層(15nm)とパリレン層(300nm)を極薄く成膜した。その後、基板温度を50℃に維持した状態で、10,12-ペンタコサジイン酸(PDA)を真空蒸着法にて積層させ活性層を形成した。水、酸素濃度が、共に10ppm以下の環境下で裏面(石英基板側)から波長254nm、照射エネルギー300μW/cm^2のUV光を60min照射しPDAを重合させた後、真空蒸着法にてAu電極パターン(L/W=50μm/2mm)を形成しソース電極、ドレイン電極を作製した。同時にSi基板上に作製したリファレンス素子では、キャリア移動度は0.13cm^2/Vsに留まったが、裏面から重合させた場合、4倍程度高い移動度0.54cm^2/Vsが確認された。また、通常のSi基板上での重合と比べパリレン-C絶縁膜を用いて裏面からUV光で重合させた場合、基板からの剥離が抑制されていることが確認できた。さらに、重合時に電子線を用いることにより体積変化による基板からの剥離を最低限に抑え、最速でμ_h~3.8cm^2/Vsの高い移動度が得られた。しかしながら、電子線重合では真空中でのプロセスが必要となり、さらには大面積化が困難であることなどデメリットも多く、今後の課題が明らかとなった。
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