研究概要 |
1垂直磁気異方性材料からの高効率スピン注入 スピン注入のための垂直磁気異方性材料として,Co/Pdの積層膜の最適化を行った.Coの膜厚を0.2nmで固定し,Pdの膜厚を変化させた結果,0.2~1.4nmの範囲で良好な垂直磁気異方性薄膜を作製することができた.またこの垂直膜をスピン注入源とするトンネル接合の作製に成功した.さらに,CoPtを用いてこの垂直膜自身をスピン注入自励発振させるための低抵抗トンネル接合素子を作製することに成功した. 2スピン緩和メカニズムの解明 強磁性体/非磁性体/強磁性体(F1/Cu/F2)の積層構造試料において,F1およびF2の材料をNi_<80>Fe_<20>,Co,Co_<75>Fe_<25>,Co_<90>Fe_<10>,Co_<40>Fe_<40>B_<20>と変化させ,種々の組み合わせで横スピン侵入長の測定をおこなった.非磁性体/強磁性体界面の状態,特にミキシングコンダクタンスの値が侵入長に影響を及ぼすことが実験的に示唆された. 3高周波スピンデバイスの創製,スピン波励起信号の測定 Si基板上にTa(5)/Ru(50)/Ta(5)/Cu(5)/CoFe(3)/Cu(3)/CoFe(2)/Ru(0.4)/CoFe(2)/IrMn(4)/Ru(5)(単位はnm)のボトムフリー層構成のCPP-GMRナノヘテロ構造素子を作製し,スピン注入自励発振の測定を行った.印加する電流値と与える磁場の大きさおよび方向を系統的に変化させて,発振特性を比較した.磁場の印加方向を容易軸と90度とし,印加電流が3mA~7mAのときに発振強度が大きくなり,半値幅も減少するという特性を得た.
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