研究概要 |
本年度は,ナノ空間を有する試料として,カーボンナノチューブとアモルファス氷の作製を行い,この表面における水素の吸着エネルギーを熱脱離分光法を用いて測定し,さらに赤外吸収分光を用いた振動解析,共鳴イオン化法を用いた核スヒン状態弁別測定を行った. カーボンナノチューブに水素分子を吸着させ熱脱離スペクトルを測定したところ,2つの特徴的なピークが観測された.径の大きな分子との共吸着を調べることで,2つのピークがチューブ内部とチューブ外部に吸着した状態に対応することを明らかにした.清浄なAg(111)表面に13KでH_2OおよびD_2Oを60L曝露し,氷試料を作製した.水の熱脱離スペクトルを測定し,水分子が非解離で吸着していることを確認した.さらに低速電子線回折の測定を行い,氷が周期構造を持たないアモルファス状態にあることを明らかにした.この表面に10KでH_2およびD_2を吸着させ,熱脱離スペクトルを測定したところ,14-28Kにかけてブロードな脱離ピークが観測された.共鳴イオン化法を用いて,脱離水素分子の内部状態を測定し,H_2ではオルトーパラ転換が,D_2ではパラーオルト転換が生じていることを見いだした.ナノ空間に束縛された水素分子を分光する手法として,誘導双極子に起因した赤外吸収に着目し,測定系の開発を行った.NaCl表面で吸着H_2の測定を行ったところ2種類の吸収ピークが観測されることがわかった.分子の吸着配向を調べるため,偏光特性が顕著なB状態を利用した共鳴イオン化法の開発を行い,105nmの真空紫外光を用いて回転状態を分光できることを明らかにした.
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