1)1x10^3Pa以上の空気または酸素ガスと燃料ガスを分離して導入できる電子顕微鏡用試料ホルダー(環境セルホルダー)を試作した。現在その性能の確認と、改良が必要な箇所の検討中である。また、ホログラフィー電子顕微鏡に酸素や水素ガスを導入する2系統のガスコントロールシステムを構築した。 2)試料に通電したり加熱した時に起きる電極電解質界面の構造変化をとらえるため、高速度カメラと既存のイメージインテンシファイヤーと結合することにより、1/100秒程度でも十分な明るさを持つ像が獲られるシステムを構築した。 3)2種類のガスを隔て、かつ電子線を十分に透過する高分子電解質膜の電子線に対する耐性を調べたところ、50nm以下の厚さでは十分なカーボン補強をしなければ電子線照射に耐えられないことがわかった。 4)以上の研究は燃料電池反応を直接観察するためのものであるが、同時に、固体酸化物型燃料電池セルをガス中で加熱しながら電極間に外部電圧を印加することにより、燃料電池内部の電荷移動反応や伝導イオンの挙動に対する知見を得るための研究も進めた。酸素イオン伝導体であるイットリア安定化ジルコニア(YSZ)に白金電極を付加した系を加熱その場観察すると、耐熱材料でもあるYSZが真空中では5-600℃で破壊された。界面近傍のYSZの内部電位は100℃程度の低温からその大きく変化し、400℃では30%も減少した。これは、低温でも白金との界面で結晶から酸素イオンが激しく吸放出されるためであることを、真空中及び酸素雰囲気中のその場電子線ホログラフィーにより明らかにした。
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