研究課題
反応に用いる酸素および水素ガスを安全に使用するため、その制御システムも導入して、透過電子顕微鏡用3隔壁方式環境セルの性能試験を行い、1x10^3Pa以上の空気または酸素ガスと燃料ガスを分離して導入できることを確認した。また、固体酸化物型燃料電池のモデルセルとして白金(Pt)/イットリア安定化ジルコニア(YSZ)試料を作製し、電界放出型透過電子顕微鏡に試料加熱機構とガス導入機構を組み込み、真空中と酸素ガス雰囲気中で100℃以上600℃まで加熱することにより、界面からの酸素イオンの吸排出,つまり、酸化還元過程を電子線ホログラフィーによる内部電位計測からその場観察する事に成功した。即ち、真空中で加熱すると酸素分子が脱離し、残された電荷で電解質は負に帯電した。その状態で、流量3x10^<-2>PaL/secの酸素ガスを試料に吹きかけると酸素が界面から取り込まれて内部電位は加熱前と同じ状態に戻った。さらに、混合導電体であるガドリニウムドープトセリア(GDC)の場合、内部電位の変化はYSZと逆転する事もわかった。なお、これらの現象は、Ptとの界面付近数10nm程度のところでのみ観察され、数μm以上離れた所や、YSZ、GDC単体では観察されず、Ptの触媒作用を顕著に表している。この酸化還元反応は、200℃程度の低温で既に始まっていることが初めて分かった。一方、3次元ホログラフィーCTを実施するため、電子顕微鏡用CTソフトウェアを導入し、まず、透過電子顕微鏡像で燃料電池やナノ金属触媒の反応を観察するために最適な試料の条件を検討した。その結果、ナノ金属触媒では、TiO_2のナノファイバーを作製しその上に担持すると良いこと、燃料電池では、固体酸化物型の場合、当初予定していた2室構造よりは、電極材料の違いを利用して同一空間内に陽極と陰極を配置する1室構造の方が、より適していることが分かった。
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