本研究においては、カーボンナノウォールの燃料電池デバイスの触媒層への応用を目指した高速成長および高精度形状制御技術の構築を目的として研究を行い、平成20年度においては下記の研究成果を得た。 まずは、従来から製膜を行っているラジカル注入型CVD装置を用いて、高速成長を実現するためのメカニズムを解明するための基礎実験を行った。その際の条件は、H_2/C_2F_6/Ar流量:100/50/1.5sccm、基板加熱温度:930℃、CVD用プラズマ生成VHFパワーおよびラジカル生成表面波プラズマへのマイクロ波電力がそれぞれ500Wと250Wとし、圧力は1.2Torr、そして、バイアス(2MHz)パワーを50Wであった。その結果、カーボンナノウォール成長速度が120nm/minと従来の6倍以上高速化を実現した。さらにこの実験結果から、イオンによるラジカルの付着確率の上昇が高速成長に極めて重要であることが判明した。 更なる高速成長を実現するために、ラジカルを高密度に生成可能であるマイクロ波励起非平衡プラズマを用いて、大気圧近傍においてプロセスの構築を試みた。その結果、圧力:400Torr、CH_4/H_2/He:25/25/1000sccm、ヒーター温度:680℃、マイクロ波パワー:500Wとし、基板はTiを堆積させて作製したSi(100)を用いた場合において、カーボンナノウォールの成長を確認することに成功した。しかし、まだ上記ラジカル注入型プラズマを用いたプロセス以上の高速化を実現できていない。そこで更なる条件の最適化と、現在導入中のin-situモニタリングを用いた成長メカニズムの知見を基に、更なる高速成長技術の構築を行う。
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