新規カーボンナノ材料であるカーボンナノウォール(CNW)は、その大きな比表面積から、触媒金属微粒子を担持する燃料電池用電極としての応用が期待されている。しかし、極めて高いアスペクト比を有するナノ構造体であるCNWでは、従来の気相担持や液相担持によって表面全体に触媒金属微粒子を担持することは不可能であった。これに対し、我々は超臨界二酸化炭素を用いた超臨界流体有機金属化学流体堆積(SCF-MOCFD)法により、粒径約25nmの白金微粒子をCNW表面全体に高密度(~10^<13>cm^<-2>)に担持することに成功している。しかし、SCF-MOCFD法による白金微粒子担持のメカニズムは末だ解明されてない。そこで本研究では、SCF-MCCFD法における白金微粒子の密度と粒径の時間および圧力に対する依存性を体系的に調査するともに、カーボン構造体(CNW、グラファイト)の表面状態(欠陥など)が白金微粒子の密度に及ぼす影響を明らかにした。 二周波容量結合型プラズマ装置(上部電極60MHz、下剖電極2MHz)を用いたAr/H_2プラズマ表面処理を行い、上部電極への投入電力や処理時間を変化させることで表面欠陥密度の異なるグラファイト基板の表面を実現した。また異なる成長条件を用いることにより、表面状態の異なるCNWを準備した。そしてSCF-MOCFD装置に有機金属(CH_3C_5H_4)(CH_3)_3PtとCO_2(圧力10MPa、温度130℃)を導入し、それぞれの基板を180℃に加熱して30分間、白金を担持した。ラマン分光スペクトルにおけるI_D/I_G比によってカーボン構造体の表面欠陥密度の差を評価し、走査型電子顕微鏡像より白金微粒子密度を算出した結果、プラズマ表面処理したグラファイト基板表面に担持された白金微粒子の粒径は1~2nmであるとともに、I_D/I_G比が大きいほど、白金微粒子密度が大きくなることがわかった。またプラズマ表面処理を施さず、表面欠陥が存在しないグラファイト表面I_D/I_G=0)では、白金微粒子の担持が確認されず、カーボン構造体の表面欠陥の制御により、白金微粒子密度が制御可能なことがわかった。
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