研究課題
高アスペクト比、大表面積といった構造的特徴だけでなく、グラフェンシートの物性に起因した高移動度などの優れた電気的特性を有するカーボンナノウォール(CNWs)の特徴を最大限に活かし、燃料電池の電極や電子デバイスなどを実現するためには、CNWsの形態や結晶性を精度よく制御する必要がある。22年度においては、構造に物理的ダメージを及ぼすイオンを用いないラジカルエッチングに着目し、水素(H)ラジカルや酸素(O)ラジカルの照射によるCNWsの形態や結晶構造に及ぼす影響を考察した。Hラジカル注入型C_2F_6プラズマCVD装置により、Si基板上にCNWsを成長したのち、イオン・ラジカル独立照射型プロセス装置を用いて、CNWsにHラジカルとOラジカルをそれぞれ30分間照射した。H_2及びO_2ガス流量、RF電力、圧力はそれぞれ10sccm、500W、0.3Paである。また基板温度は300℃とした。ラジカル照射前後のCNWs断面を走査型電子顕微鏡で観察した結果、Hラジカル照射後ではCNWsの高さや形状に大きな変化は見られないのに対し、Oラジカル照射後ではCNWsの高さが半分程度となり、先端形状には顕著な変化が見られた。また、ラジカル照射後のラマンスペクトルでは、Oラジカルの場合はI_G/I_D比がほとんど変化しないが、Hラジカルでは減少することがわかった。この結果から、Oラジカルによる縦方向のエッチングにおいて、積層グラフェン内の六員環構造の乱れが増加しないが、Hラジカル照射ではグラフェンへの水素吸着が六員環構造の乱れを誘起することが明らかとなり、各種ラジカルの効果を有効に活用することがCNWの加工技術には重要であることが示唆された。さらに、上記のHラジカル注入型C_2F_6プラズマCVD装置などにより合成させるCNWsの特性を評価する新技術として、現在注目を集めているテラヘルツ(THz)波を用いたテラヘルツ時間領域分光法を用いた分析システムを構築し、合成条件の異なるCNWsの評価・分析に適用することに成功した。
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