本研究では、高次高調波を用いたアト秒パルスによる原子・分子におけるアト秒領域の超高速現象の計測とその解明を目的としている。我々は、そのための基盤技術として時間特性を計測するためにSiおよびSiC等の平面基板からなる高調波ビームセパレータを2分割して用いるXUV領域の全反射型アト秒自己相関計(アトコリレーター)を独自に開発してきた。平成20年度は、このアトコリレータを利用して、アト秒パルス列の時間コヒーレンスの直接計測を行った。このビームセパレータは、上下に2分割されており、その片方は光学遅延を与えるためピエゾ駆動の可動ステージに置かれている。ビームセパレータの分割線に高調波ビームの中心が合うように照射されると、高調波はセパレータ面で反射されると同時にそのエッジで回折される。本実験では、この回折光をスリットを通して分光器に導き、ビームセパレータの片方の位置を変化させながら各高調波ごとに回折パターンを観測し、その時間変化を計測した。今回、従来の報告を大きく上回る33次高調波までのコヒーレンスの計測に成功した。この時の精度はピエゾ駆動装置のステップで決まり、約13アト秒である。この結果測定された、27次高調波の時間コヒーレンス約13フェムト秒は、以前に直接計測されたパルス幅約8フェムトのデータを裏付けるものであった。さらに、励起高強度を増大させると電子の軌道運動が大きくなるためアト秒パルスの位相が大きく変化し、アト秒パルス列の電場の対称性が保たれなくなることが初めて示された。
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