研究概要 |
1.キャビテーション・ショットレス・ピーニングCSPによりミクロ歪を低減しながら圧縮残留応力を導入できことを明らかにしてきた。一方,水素社会の実現には金属材料を水素環境にさらすと脆化する「水素脆化」の解決が喫緊の課題となっているが,圧縮残留応力の導入により水素脆化を抑止できる可能性がある。本研究において,ステンレス鋼SUS316Lを供試材とし,CSPで処理した試験片と未処理の試験片を水素環境にさらして亀裂進展試験を行った結果,CSPにより亀裂進展を抑止できる,すなわちCSPにより水素脆化を抑止できることを実証した。 2.一般の圧縮残留応力を導入する表面改質法では,圧縮残留応力を導入すると転位などのミクロ歪が増大してしまい,転位などに水素が捕捉され水素脆化が促進されてしまうが,CSPではショットレスでピーニングできるので,ミクロ歪の増大を抑止して圧縮残留応力を導入でき,CSPにより水素脆化を抑止できる機構を明らかにした。 3.CSPによる表面改質層の電磁気的特性を渦電流法で計測し,逆問題解析により表面改質層の電磁気的特性を評価して,残留応力の深さ方向の分布と比較し,渦電流法によりCSPによる表面改質層の深さを非破壊で評価できることを明らかにした。 4.CSPによる処理時間を変えた試験片の亀裂進展試験を行って,CSP処理時間とき裂進展速度の関係を明らかにし,CSPの処理時間の最適化を行った。 5.CSPで処理したローラなどを摩擦摩耗試験に供し,CSPにより摩擦摩耗特性を向上できることを実証した。 6.CSPにより塑性硬さを増大しながら,弾性硬さを低減できることを実証し,CSPによる新機能層を創成できることを明らかにした。
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