研究概要 |
樹脂の粉末焼結積層造形はラピッドマニュファクチャリングなど産業的可能性が高いにも関わらず,得られている知見は非常に少ない.そこで本研究では,本加工法の微細性の向上に資するために1.造形条件が微細性に与える影響,2.粉末の特性・構成が微細性に与える影響,3.アプリケーションに関する研究の3つの知見を得ることを目的とする. 平成22年度までに,本研究の基礎となる,レーザビーム径の微細性と造形物の微細性の関係を明らかにしてきた. 平成22年度(繰り越しを行ったため,22年度,23年度)は,主にアプリケーションの研究に注力した.本研究申請者は90%以上の高い空孔率を有し,かつ培養液をまんべんなく供給するための微細流路ネットワークが配置された主に大型高代謝臓器組織再構築を目的とした担体を造形している.これまでに最小流路径が0.8mmの担体を造形してきたが,流路径はさらに小さいことが望ましい.この担体の造形に本研究で開発した造形装置および造形法を応用したところ,最小流路径が0.3mmの担体を造形することに成功した.本造形においては高い空孔率を実現するため,粉末材料には食塩と生分解性樹脂の混合粉末を利用し,造形後に食塩を溶出している.しかしながら,食塩はその伝熱特性と赤外線の透過特性が良いことから,余剰焼結が大きく,微細性を低減させていることが分かっている.この問題を解決するため食塩の一部もしくは全てを担体として使用する生分解性樹脂よりもさらに高い分解速度を有する樹脂粉末に置き換えた.薄板の造形において,約2割の厚さの低減が可能となり,微細性の向上に有意な効果があることが確認された.また,本研究では利用可能な樹脂の範囲を大幅に拡大する新たな加工法を開発し,消失が容易な生分解性の樹脂の造形に成功した.
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