加工の高度化や機械システムの高性能化・長寿命化を支配するダイナミック表面の動的物理化学現象が未解明なゆえに、この方面の技術革新に大きな障害となってきた。これに対し、最近、研究代表者等により発見されたトライボプラズマを包含する摩擦電磁気現象こそ、このトライボロジー分野における技術革新に真の役割をもつ現象として大きな期待が寄せられている。 本研究においては、この摩擦電磁気学の新学問分野開拓と産業界におけるトライボプラズマに基づく技術革新を目指して、摩擦電磁気発生の根源的解明とトライボプラズマ応用技術の開発研究を行う。研究は、接触面内と接触面外の二つに大きく分けて展開する。接触面内においては、発生期の摩擦帯電電位分布計測術開発を行いつつ、光子放出などの面内電磁気現象を明らかにし、あらゆる摩擦電磁気現象の根本原因である発生期の摩擦帯電の本質を究明する研究を展開する。接触面外の隙間では、トライボプラズマ温度、隙間内電界分布、電子やイオンによる表面攻撃、その攻撃による表面改質などの物理現象の究明を行い、発見したプラズマの周囲への作用を詳細に調べるとともに、応用技術の開発に不可欠な磁場印加や、電気抵抗率可変材料によるプラズマ制御技術開発を行う。さらに耐プラズマ性及びプラズマ機能性トライボマテリアル・固体潤滑剤・油剤を開発するための設計指針を得る。これらを総合して摩擦電磁気学の開拓と産業界の技術革新に向けた応用技術を開発する。
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