研究概要 |
現実のシステムにおいて正味のエネルギー利得を得るという観点から,正味のエネルギー削減率と制御利得という新しい2つの評価指標を導入し,既存の制御則を評価した.その結果,正味のエネルギー利得の観点では,フィードバック制御とプレディターミンド制御は同程度の制御効果が得られる一方,制御利得の観点ではプレディターミンド制御は一般に大きく劣ることを示した. フィードバック制御においては,壁近傍の乱流準秩序構造の生成機構を調べるために,壁面近傍の各速度成分に対して仮想的な減衰力を与える数値シミュレーションを行った.その結果,壁面近傍のスパン方向速度の減衰が摩擦抵抗低減に有効であることを示した.更に,より現実的な制御則を目指して,壁面流れ方向せん断応力のみを制御入力として,壁面スパン方向速度変動を減衰させる制御則を開発した.本制御則は,従来提案されている壁面流れ方向せん断応力に基づく制御則の中でも,最も大きな制御効果が得られることが分かった.(Frohnapfel et al., 2008) プレディターミンド制御においては,時間的,及び空間的な周期を持つスパン方向速度擾乱が壁面摩擦抵抗低減に及ぼす影響を調査した.その結果,時間的,空間的制御のいずれの場合においても摩擦抵抗低減に関して,最適な周期,及び波長が存在することを示し,両者は壁面近傍の準秩序構造の対流速度を考慮すると,ほぼ同等の時間スケールに対応することを示した.また,空間的制御の方が,より少ない投入エネルギーで大きな摩擦抵抗低減が得られることが分かり,その結果,正味のエネルギー削滅率,ゲインの両面において,より良い制御成績が得られることが分かった(焼野ら,2008).また,ハードウェア開発においては,MEMS技術を用いることで,従来例のないサブミリメートルスケールのプラズマアクチュエータの製作に成功し,単体アクチュエータの性能評価実験を行い,アクチュエータのサイズが誘起流速に与える影響を調査した.また,同時にアクチュエータ周りのプラズマ反応/拡散を考慮した数値計算スキームを確立し,実験結果と定性的な一致を確認した(Okouti et al., 2009発表予定).
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