研究概要 |
熱ふく射(thermal radiation)は,物質における荷電粒子の熱振動に起因する電磁波であり,工業的にも得やすい見近かなエネルギーであるが,そのままでは,Planck分布の及ぶ広い波長域に分散し,また,指向性が弱いぼんやりしたふく射である.そのため,レーザーの場合のように,特定の波長と方向にそのエネルギーを集中して工学的な機能を発揮させるには有効でないことが多かった.いま,この点を克服し,特定の波長帯域のふく射が強調されるスペクトル機能性をもつ熱ふく射を得るための技術が求められている. 本研究は,スペクトル機能性ふく射の制御技術開発をめざす熱工学の研究の展開を図る.電磁波動論・分光学・固体物性論・伝熱工学を基礎として分光熱工学の実験・理論研究を行い,熱工学のシステム的な視野をもって,エネルギー工学と生活環境工学のために有効なハードシステムの実現をめざす. 平成20年度(初年度)は,スペクトル機能性ふく射の制御技術開発をめざす本研究の基礎を確立することを目的とした.すなわち,牧野は若林・松本と連携し,(1)広波長域高速ふく射スペクトル測定装置の高性能化を図り,(2)放射ふく射の可干渉性の機構に関する仮説を提案した.花村はGaSb系赤外光起電力電池を試作した.山田は可視-赤外/反射・放射スペクトル機能性をもつ周期的微細構造を試作した.宮崎は自己組織化微細構造の作製・非周期性を含む周期性構造の評価法を検討した.また,京都大学において計2回の研究打ち合わせ会を行った.
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