本研究では、実際の肝細胞や血管内皮細胞などを基に、肝臓組織再構築を実現させ、バイオ人工肝臓や再生医療への応用を目指す。肝臓は、肝細胞、毛細血管、胆管に繋がる毛細胆管から構成されている。本研究では、そのような肝臓に類似した構造を持つバイオ人工肝臓を構築して、物質移動性能の評価とその改善を明らかにする。具体的には、肝細胞の3次元構造の構築、有用物質の産生と輸送、不要物質の除去、血管網による酸素の輸送の4点について4年間で取り組み、肝臓に類似した構造と機能を持つバイオ人工肝臓の実現を目指す。平成20年度で得られた成果は以下の通りである。(1)多重層化による肝細胞の3次元構築:特に生体吸収性高分子による微孔性膜を作成し、小型肝細胞の多層重層化に成功した。高分子の消失とともに、細胞が重層化された。(2)有用物質の産生:肝細胞からのアルブミン分泌の特性を計測した。(3)血管ネットワークの形成:肝細胞の集合体に、血管網を形成するというVascularizationは再生臓器の研究で大きな壁になっているが、本研究では、肝細胞と血管内皮細胞の共培養系モデルを構築した。さらに血管網形成が外的な機械的刺激によって大きく促進する効果を見出した。(4)内皮前駆細胞による血管網形成:分化の機能に富んだ前駆細胞から分泌される増殖因子により大きく血管網形成が促進された。(5)胆管上皮細胞による胆管ネットワーク形成:胆管上皮細胞を分離して、コラーゲンゲルサンドイッチ構造で培養したところ、極めて大きな胆管ネットワークの形成に成功した。この成果は、American J Pathologyに掲載されたが、データの一部は、ジャーナルの表紙に採用された。海外誌の表紙に採用されるのは高い評価を受けたと考えられる。
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