研究課題/領域番号 |
20246041
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
谷下 一夫 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (10101776)
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研究分担者 |
池田 満里子 慶應義塾大学, 理工学部, 名誉教授 (00051368)
須藤 亮 慶應義塾大学, 理工学部, 専任講師 (20407141)
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キーワード | バイオ人工肝臓 / 幹細胞 / 物質移動 / 胆管 / 毛細胆管 / 毛細血管 / 共培養 / 星細胞 |
研究概要 |
今年度は、本研究の最終年でバイオ人工肝臓構築の締めくくりと言える成果を得る事が出来た。本研究の目標は、実際の肝臓の組織に近い組織構造を体外で実現し、その再構築された構造をバイオ人工臓器や再生医療へ応用するものである。そのためには、肝細胞、血管内皮細胞、及び星細胞の3種類の細胞による肝細胞組織構造を体外で再構築させる必要がある。昨年度は、それぞれの細胞において組織構築が可能になることが分かり、複合組織である肝臓再構築の可能性を見いだした。最後の年である23年度では、異種の細胞の相互作用により、異種の細胞による組織再構築を実現させることを最大の課題とした。異種の細胞による組織再構築の仕組みが明らかにされれば、その延長線上に、肝臓の組織再構築が可能となるからである。そのような観点から、本年度では二つの大きな進展を得る事に成功した。一つ目の大きな成果は、星細胞の関与に類洞構造の構築である。類洞では星細胞が細胞突起を伸ばして血管構造を裏打ちしているが、この構造を薄い生分解性ポリ乳酸-ポリグリコール酸共重合体(PLGA)多孔性薄膜の活用によって構築した。さらにPLGA多孔性薄膜が異種細胞間相互作用を促進させ,機能的な肝類洞様組織の再構築に有効な細胞足場であることを示している.二つ目は、3次元の肝細胞組織内での血管化に成功した点である。血管化の課題は再生医療の分野では極めて困難な課題で、世界中の組織工学の研究者が血管化の実現を目指しているが、顕著な進展が無かった。本研究ではマイクロ流路を活用した実験で、血管化に成功した。以上のように本研究の最終年度で、当該分野で困難であった課題を克服する事ができ、バイオ人工肝臓の実用化に向けて大きく前進したと言える。
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