研究概要 |
平成22年度は,1)人の把持と物体操作における手指の内部変形の計測,2)軟組織の力学モデリングと変形特性の同定,3)把持や操作における人指の変形シミュレーション,4)人の巧みな操作における力学的な源泉の探求を進めた.1)手指の内部変形の計測では,Spatial Association Correspondence (SAC)とThin Plate Spline (TPS)を用いて,局所的な対応点探索と大域的なモデル更新を交互に実行することで,変形場を計算する手法を提案した.これにより,画像のアフィン変換に加えて組織の局所的な変形に対処できる.2)軟組織の力学モデリングと変形特性の同定では,直列モデルと並列モデルの限界を克服するために多重粘性要素を提案した.レオロジー変形のモデリングにおいては,コーシー歪みとグリーン歪みを用いて変形を定式化した.さらに,制約安定化法を用いて,非一様な層状物体をモデリングする手法を提案した.また,変形形状と変形により生じる力を同時に再生するように,モデルを選択しパラメータを推定する手法を提案した.3)把持や操作における人指の変形シミュレーションでは,人指のMR画像から人指の変形モデルを構成し,転がりや滑りを含む人指の変形をシミュレーションした.軟組織を梁の集まりで表わし,転がりに起因する制約や梁と梁の間の弾性要素により局所滑りを表わす手法を提案した.4)人の巧みな操作における力学的な源泉の探求においては,視覚情報遅れ下における物体操作を解析した.提案する二段階制御法では,情報伝達の遅れに対してロバストに物体を操作できることを示し,それが柔軟指のポテンシャルエネルギーの性質に帰することを示した
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