5力年計画の最初め年度に当たる平成20年度には、実用的なプラズマリアクターの開発においては、プラズマリアクタと触媒との位置関係に重点を置いて低濃度の揮発性有機物の分解除去実験を行った。VOCとしては、主に100-500ppm(大気中濃度)のトリクロロエチレンを使用し、触媒には、二酸化マンガンを担持した多孔質のアルミナセラミックを用い、プラズマ反応の直後に置いた場合、また、電界を触媒にかけた場合と僧でない場合の比較検討を行った。その結果では、電極の端部で電界集中が起きると反応が促進され傾向があること等が判明した。反面、触媒量の最適化はなされておらず、今後の検討が必要と判明した。一方、光学測定においては、励起状態の窒素分子(一般にAステートと呼ぶ)のLIF計測を試み、プラズマ放電後に確かに窒素分子が励起されていることを実験的に確認することができた。放電極直下と平面電極近傍でのラジカルの生成量を比較した結果、かなりの量の励起窒素が梁電極近傍で形成されていることから、これらが電離密度の高い2次ストリーマ中で形成されること、また、その生成量は比較的少なく、放電によって形成されるオゾン量と同じオーダであることが判明した。また、OHのLIF計測においては、従来の248nm励起以外に、282nm励起での観測を開始し、確かに感度が100倍程度高いことを確認した。今後は、2つの波長でのLIFを使い分ける予定である。また、1次元発光スペクトル分析も試み、大気圧グロー放電では放電部から数cm離れた場所においてもOHラジカルが存在すること、分子温度に変化が見られることなどを明らかにした。また、励起酸素のLIF信号を用いて酸素分子の温度計測にも成功するなど、多くの知見を得ることができた。
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