研究課題
本研究は、単一磁束量子デジタル/アナログ変換器と誘導分圧器を主構成要素とする量子交流電圧標準のシステムの開発を目標とする。平成21年度には以下の成果を得た。(1)デジタル/アナログ変換器の開発:前年度の研究で明らかになったデジタル/アナログ変換器の変調方式の問題を抜本的に解決するために、バイナリコード入力方式に代わる1ビット変調方式を検討し、パルス密度変調方式を提案した。具体的には、バイナリコード入力方式で用いるパルス数増倍回路の増倍率を可変にしてサンプリングクロック間隔に発生する磁束量子パルスの数を変えることでパルス密度変調符号を生成し、1ビットの電圧増倍回路アレイに入力する。これにより、出力電圧レベル切り替え時の過渡現象に起因するバイアス電流の負荷への流出を大幅に抑制できる。電気通信大学との共同研究により、2ビット版可変パルス数増倍回路を設計・試作し、正常動作を確認した。超電導工学研究所(SRL)との共同研究による回路作製プロセス共通化に関しては、詳細な検討を重ねて回路プロセスの仕様を決定し、デジタル/アナログ変換器構築のための基本回路セルの設計に着手した。また、前年度に問題となった測定システムの不具合を解決して10ビットデジタル/アナログ変換器による波形合成を目指したが、測定システムの改修・再構築に予想以上の時間を要し波形合成の実証には至らなかった。(2)誘導分圧器の開発:前年度に開発した量子交流電圧標準用誘導分圧器の周辺回路を整備した。この誘導分圧器システムを用いて市販高精度電源(キャリブレーター)の出力電圧とジョセフソン素子の出力電圧を比較したが、定量的な誤差の測定には至らなかった。また、量子交流電圧標準の誤差・不確かさの検討のため、単一磁束量子デジタル/アナログ変換器と光パルス駆動ジョセフソン接合アレイの出力電圧の直接比較実験の検討を行った。
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Superconductivity Web 21 Winter, 2010
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Superconductor Science and Technology Vol.22
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超伝導Web21 2009年10月号
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