研究概要 |
統合自然災害シミュレーションシステムとは,災害シナリオに応じて,都市に生じる災害・被害と被害対応を数値計算によって予測するシステムである.地理情報システム(GIS)を使って都市や構造物の解析モデルを作成し,災害・構造物応答,被害対応を計算し可視化する.平成21年度では,統合自然災害シミュレーションの根幹となる,災害・被害過程の物理シミュレーションと,被害対応のマルチエージェントシミュレーションに対し,数値計算の大規模化・高速化を行った.これは並列計算を利用するもので,シミュレーションの数値解析手法のコードに,MPIとOpenMPを用いたハイブリッドの並列化を施した.スケイラビリティを確保しつつ,問題と計算環境の規模に応じた計算性能となるようコード化には工夫を凝らした.この結果,物理シミュレーションとマルチエージェントシミュレーションの両方の数値解析手法ともに,一応の計算性能を確保することに成功した.特に,インプット/アウトプットの方法を抜本的に代えたことの効果は大きかった.この点は,物理シミュレーションの数値解析手法では見逃されがちであり,他のシミュレーションの並列化された数値解析手法に転用されることが期待できる.東京23区を対象とする統合自然災害シミュレーションのプロトタイプに,大規模化.高速化を施した数値解析手法を実装した.地震災害に限定したケースであるが,ハイブリッドの並列化を実装することによって,シミュレーションの大規模化と高速化を実証した.
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