研究概要 |
内陸型大地震において生じる断層変位によって上部の堆積地盤でも大きな変位が生じ,これを横切る道路,鉄道トンネル,ガス水道管などの地中埋設物等,地中構造物が大きな被害を受ける.このような被害を防ぐために,断層変位を受ける堆積地盤の挙動を予測し,その地盤変位と地中構造物の相互作用の理解が必要である.しかしながら,地盤中の破壊面の伝播,それに伴う変位は多くの要因の影響を受け,極めて複雑である.そこで本研究では,遠心模型実験により縦ずれ逆断層変位を受ける地盤変形を再現し,断層タイプ,拘束圧,岩盤と堆積層の境界面の摩擦条件が縦ずれ断層の変位進展に与える影響について検討すると共に,その変位を受ける埋設管の挙動を調べた.その結果,以下のような点が明らかになった.即ち, ・下部岩盤の断層近くらか最初に生じた断層面は,地盤途中で進展が止まり,新たな断層面が複数が生じ,その発生位置,発生個数によって地盤変形が決まる. ・上記逆断層変位における破壊面の伝播は,上載圧力と,岩盤と堆積層の境界の条件の影響を強く受け,上載圧力が大きくなり,岩盤と上部堆積層の境界の粗度が小さな場合は,岩盤の変位に対する地盤の変位が小さくなり,鉛直変位量も小さくなる. ・地盤中に生じる不等変位領域の幅は,逆断層変位に比べて正断層変位では狭くなる.また破壊面の傾斜は,正断層変位では急になる. ・土被り厚が浅い場合,上記岩盤と堆積層の境界条件の違いが地盤や埋設管に与える影響は少ない. ・縦ずれ断層変位の場合,鉛直変位と水平変位が局所的な変化が生じ,埋設管は軸力と曲げ荷重を受け,結果として土被りが浅い場合は座屈に近い破壊形態となる.
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