研究概要 |
サンゴ礁生態系への複合ストレスの評価体系の一般化に関連して,地下水およびそこに含まれる栄養塩類に関する観測を沖縄・石垣島の吹通川河口周辺海域で実施し,同海域での海草藻場の空間分布とマングローブ林からの河川水起源および前浜から浸出する地下水起源の栄養塩供給パターンとの対応関係を明らかにすることに成功した.また,石西礁湖および石垣島・西表島周辺のサンゴ被度等の長期モニタリングデータ(環境省)を分析し,サンゴ被度の経年変動パターンが大きく3グループに分かれることを明らかにした.そして,その中のサンゴ被度が長期的に低レベルで推移しているサイトでは,海水の水平透明度が相対的に低くなっていることを示した.このことは陸源負荷の定量的評価の重要性を端的に示すものである.そこで,石垣島の主要4流域に関して陸源負荷の計測を行うとともに,地表流と地下水流による陸源負荷の数値モデル解析を実施し,計測データの特徴を再現することに成功した.また,サンゴ礁生態系炭酸系動態・物質循環モデルの開発に関して,有機物(粘液)や微生物ループのモデル化等を行うことより,モデルのさらなる一般化を実現した.さらに,石垣島白保サンゴ礁域での現場計測ならびに室内実験により,サンゴ礁の重要な構成要素である石灰質堆積物が,二酸化炭素濃度500μatmで溶解が始まることを明らかにした.一方,Connectivityの解析対象としてさらに海草を加え,沖縄諸島沿岸に広く分布する海草5種を対象にサンプルの収集を実施した.そのうちのリュウキュウスガモとウミショウブに関して,マイクロサテライトマーカーを用いて集団遺伝学的解析を行ったところ,いずれの種でも,群集の拡大は主に有性繁殖で藻場を維持していた.また,調査地によって遺伝的多様性に違いがあり集団間の遺伝的分化が高いことから,集団間のconnectivityは弱いことが示された.
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